【あおもりめぐり】温泉と緑の旅①蔦温泉と蔦沼
あおもりのゴールデンルートを改めて巡りました。目的は温泉と緑の癒し、そしてあおもりの価値を改めて発見するためです。。あおもりの魅力はアートや手しごとなどの文化もありながら、根強く温泉、そして濃く深い自然のチカラがあると思うからです。
まずはわたしの中の温泉ランク1位の蔦温泉。
奥入瀬渓流ちかくにある、ブナの森の中の一軒宿。かつての文豪が愛した宿であり、鄙びた感じでありながら風格があります。
蔦温泉の魅力は、源泉の上に浴槽があり湯船の底から温泉がプクプク出てくるから、足元から腰からじんわりあたたまること。浴槽のブナ材の香りも源泉と馴染んで心地よい。
泉質も強すぎなく柔らか。
温泉に浸かっただけでもさっぱり感がたまらないのに
お風呂から入った後の休憩所「楓の間」の時間が至福。
蔦のの森の緑が目にやさしく、さわやかな風を受けて涼むことかできます。
備えてある麦茶と水も温泉水だから。格段にまろやか。
この蔦温泉の敷地内から「蔦の森」遊歩道コースがあり、すぐに蔦沼に辿りつけます。
生憎の逆光でイマイチでしたが、言わずと知れた絶景。絵の中に入り込んだようなここちになれる場所。紅葉のシーズンに訪れてみたい。
【あおもりめぐり・八戸】朝市というより毎週お祭り?「館鼻岸壁朝市」@八戸
念願の「館鼻岸壁朝市」@八戸。
凄い凄い、と聞いてはいたけれど、この朝市の強烈さは写真では決して伝わらないですね。実際体験しないとわからない規模感と熱気。
こ、これは「朝市」というより、毎週朝にやってる巨大屋台、「祭り」なんじゃないでしょうか。普通年に一度か二度やるような一大事、屋台フェスを八戸の場合毎週、しかも早朝にさらっとやってしまっているというか。
八戸、毎週お祭りしてますよね?お祭り大好きだからですよね??と叫びたくなる。
朝6時には市民の半分が来てるんじゃないか?と思ってしまうような人混み。市街地の商店街より確実に多いであろう人出。
巨大マーケットに軒を連ねるのは、真夏の強い日差しでは痛まないか心配になる新鮮な魚介類から、採れたて野菜、ちょこちょこ食べれる屋台系、庖丁などの生活用品までなんでもあり!車も売ってるときもあるとか。このゴチャマゼ感、たまらない。。
マーケットの中でも人気の店があって、椎茸屋さんに長蛇の列。
大人気は塩手羽。一個70円をみなさんたくさん買い込んでいる。
屋台なのに揚げ物台?の数がすごい。お店の人が威勢良く、かつ手際が良く、見ていて気持ちいい。
高知の曜日市とか飛騨高山の朝市 、倉敷の三齋市とか、全国各地でみた風情ある朝市とは全く異次元。タイや中国のマーケットに近いけれど、なんせ朝4時から9時までという早朝。こんなパワフルな朝市ってほかにないんじゃないでしょうか。
しかし何故早朝からこんなに熱気がみなぎるのか。やっぱり漁港の地と血だからでしょう。朝が弱く虚弱なわたしは、やはりこの土地では生き残れなかったことをつくづく思い知らされました。。
八戸に新幹線で降り立ったときから、祭りのシーズンじゃないのに和太鼓がドンドコ鳴っているような感じでしたが、朝市で和太鼓の音がクライマックスになったのでした。
このワクワクを味わいたければぜひ八戸へ!
とはいえ、巨大な市民の台所であるため旅行者は見どころがわからない。
そんな時は、まち歩きガイド「さんぽマイスター」のツアーに申し込むのがおすすめ。人気のお店、おすすめのお店を案内してくれます。
https://hachinohe-kanko.com/experience/sanpomeister_tatehanaganpeki
それに日曜朝市の時だけ、100円市営循環バス「いさば号」も走行していて市街地からのアクセスも便利。
https://hachinohe-kanko.com/asaichi-junkan-bus
至れりつくせりなのでぜひ
大川朝子
【東京めぐり】<ごはん>郷土料理「つがる」@祖師谷大蔵
私にとってよい店はご主人の人柄と生き方が滲み出て、そのおかげでお客さんが和み、よい時間を過ごせる場所。
佇まいからして「絶対によいお店!」と確信していた祖師谷大蔵の「つがる」はまさにそんなお店でした。
入った途端、「あー思い切って来て良かった」と嬉しくなる。なんとも和む雰囲気を醸し出しているのはご主人と女将さん。ともに80を超えていらっしゃるのにテキパキかつ柔らかな笑顔。
ご主人の頭に締めた日本手ぬぐいが粋でこんなに馴染んでいる方をはじめて見た気がします。
郷土料理というだけあって、弘前出身のご主人が作るメニューには津軽の家庭料理がちらほら。「天ぷら」「野菜オムレツ」や「肉ステーキ」「支那そば」と幅広く、頼んだ料理はどれも美味しく、東京とは思えないお手頃値段。
ここなら夕食を兼ねて一杯も良さそう。
ひとりで来ていたサラリーマンのお兄さんが
「あー食べたー」との叫びに「明日からがんばろう」という気持ちの声を聞いた気がしました。
自分が飲兵衛だったら週3日は通いたい。いつまでも続けて欲しい。
◇郷土料理 つがる
https://www.google.co.jp/amp/s/s.tabelog.com/tokyo/A1318/A131814/13081724/top_amp/
【埼玉群馬めぐり】<カフェ>軸のあるステキなお店巡り
週末ぐんま暮らしをする方が見つけたとっておきをご案内していただく小さな旅。2日目はより暮らしに根付いたモノばかりで胸が高鳴りっぱなしでした。
午前中はご自宅(別荘)へ。
途中、富岡製紙場がある富岡にて決して製紙場ではなく「おかって市場」に立ち寄り。
市街地活性化と地産地消推進のために、かつて繭の乾燥場だったレンガ造りの建物をリノベーションしたお店。
土地で獲れたお野菜やお花、手づくりの雑貨などを販売するほか、カフェのようなコミュニティスペースがあります。奥ではちょうど金継ぎ教室が開かれていました。
月に一度マルシェを開催、地元のカフェや雑貨屋さんが集まるらしく若者のセンスで町が活性化されていることが伺われます。
ついにご自宅へ。
南仏プロバンスのようなお庭の緑と花が眩しいおうち。小鳥がさえずり遠くに川の音も流れる理想郷。
おうちの中も細部に渡りセンスよく、かつ自然体で心地よく過ごせる空間で、お人柄を反映しています。
もし田舎に住むことがあったらこんな風にしたい、というお手本になりました。
お庭に咲くカモミールを摘ませていただくと、現世とはすっかり離れた時間に。
摘みたてのハーブいっぱいのお茶なんて、ティーバッグしか普段飲まない飲んモノとしては感動。目にも優しい。
デトックスとはこのこと。身体に溜まった疲れと汚れが流されていくようでした。
ああ、こういうものと時間をほんとうは カラダが欲しているのです、普段見て見ぬふりをしているけれど。
その後は高崎に向かってかわいいもの巡り。
果樹園に囲まれたアイスクリーム屋さん。
土地の果物や野菜を使って種類豊富。窓越しに果樹園が広がり気持ち良いです。
高崎市街に入って、素敵な珈琲屋さん。
お店の外観もご主人の外見もイケてるのに、対応も珈琲の淹れ方もとても丁寧で、気持ちいい。肝心の珈琲も美味すぎてすっかりファンに。奥様が作ったという、ショーウィンドウに並ぶお菓子の佇まいもなんとも素敵でした。
ここに再訪するために、高崎市街地を運転できるようになるのが当面の目標となりました。
ランチは、これまたずっと来たかった「群馬会館食堂」。群馬県庁と前橋市役所に挟まれた洋館の地下にある、1930年創業の老舗レストランです。
こういう役所近くにある、昔の趣きを残した老舗レストランがとてつもなく好きです。各地にいくつか残っていますよね。
洋食の代表格ちょっとずつの欲張りプレート。
デザートのプリンもレトロ。
最後はクライマックス、私の中でのメインスポット「スーパーまるおか」へ。
イオン高崎のほぼ隣に、堂々と構えるスーパー。
見た目も雰囲気も食料総合品のお店であるけれど、中に入るとちょっと、いえだいぶ違います。
社長が記したと思われる格言の数々。
全国津々浦々の生産者をまわり、社長が良いと思ったものだけ仕入れています。食が人の基本であること、だからこそ良いものを取り入れて欲しいという思いがビシビシと伝わってきます。
特にオススメは「社長シール」付き。
普通のスーパー以上にたくさん商品が並んでいるのに、どれもこれもハズレがなさそう。
思いある生産者によって作られたものを、思いある方がセレクトしているからでしょう。
実際私個人が各地で見つけた、いいな、という商品も並んでいました。しかし「各地のよいもの集めました」という次元ではございません。
例えばワイン売り場。
ラベルがない。どこで見つけてきたのだろう?尖ってます。
乳製品コーナー。
バターの値段が。。
尖っています。。
商品群のお値段は平均よりも結構高価だし、かなり癖のあるスーパーといえますが、お客さんはひっきりなしに来ていました。一定の顧客のココロをしっかりキャッチしています。
食は大事にしたい、家族にはちゃんとしたものを食べさせたい。。そこに価値を置くお客さんのニーズはいくらでもあるのです。
イオンの隣にあっても全く競合しなさそう。
このスーパーのビジネススタイルは、あまりに衝撃でガツンとやられて未だ興奮が冷めません。東京に帰ってきてもいわゆる高級セレクトスーパーの存在が薄らいできました。社長に会いたい、お話をお聞きしたい。。
今回ご案内いただいたところには共通点がありました。きちんとした軸と思いがあって、お客さんはもちろん、自分達以外の環境、または未来まで考えているお店。
こんな小エリアでもこんな素敵な場所がたくさんあることに救われ、また自分もそういうものを見つける審美眼を持ちたい、と強く思いました。
最後になりましたがこのセレクトをして運転までしていただき案内いただきました花村さん、本当にありがとうございました。私にとってはすごい宝物になりました。
【埼玉めぐり】<ごはん><おみやげ>土地に根付いた美味しいもの巡り
何かと地方に目がいってしまうけれど、遠くに行かなくても良いものは近くにもあり、ただ知る機会がないだけのこと。
仕事を通して知り合った審美眼この上ない方が、週末過ごす群馬に通いがてら見つけた、おすすめの色々をご案内してもらう旅に恵まれました。
地元の人にご案内してもらう旅が当たり前になっているわたくしですが、この方の目にかなったものなら全て良いものなこと間違いありません。楽しくなることは旅の前から確信していましたが、それ以上のものでした。
まずは埼玉、花園(深谷市)へ。降り立ったこともない地域。
目的は90年以上かりんとうづくりをする旭製菓の「かりん糖」。
どこの地域にもあるあるの風景、郊外店が並ぶ騒めく国道から一歩入ると、田んぼと緑が広がるのどかな風景。新緑まぶしい自然の中にポツンとある立派な工場は、清流の荒川のほとりにあり、隠れるように河原に位置することから「隠れ河原のかりん糖」と名付けたそう。
ここではなんと50種類以上のかりんとうをつくっていて、そのほぼ全てが試食できます。試食がなかったら奥から持ってきてくれます。
伝統の黒糖味からピーナッツ、牛乳、クリーミーチーズ、クッキー味、竹炭味などまであり、かりんとうの概念を覆えします。深谷ねぎみそ味などのご当地ものまであって、企画開発力と攻めの姿勢に脱帽。ブラジルコーヒーボーイってなんだ?
ビールにあいそうな新商品「オニオンチーズ味」を購入。かりんとうを買ったようなそうでないような、不思議な心地。でも食感は紛れもなき日本人のソウルフード、かりんとう。
直売店の奥はフリーのカフェスペースになっていて、荒川の清流を眺めながらゆっくりお茶することができます。子供を遊ばせておきたいような、ほっとする河原と緑が広がっており、このスペースはこの土地の良さを伝えたくて作ったのかな、とこの会社の心意気を感じました。間違いなく穴場の癒しスポットです。
原材料を国産にこだわり、丁寧に生地を仕込み、大切に自然発酵させて造っているそう。いつかこの過程をみてみたい、工場見学をしたいです。
次に寄ったのは寄居。町の中心部にある昔ながらのお肉屋さんへ。豚肉の味噌漬けが寄居の名産であり、早くもお土産として購入。
味噌漬けはもちろんですが並ぶお肉自体の質がよさそうです。
寄居は一瞬立ち寄っただけですが、町並みが古くていい感じでひなびていていて、たくさん良いものがある匂いがプンプン漂ってきました。
お昼と夕方16時~17時だけ営業の各地からとんかつファンがあつまる絶品大衆的とんかつ屋さん、うどん生地にくるみを練りこみくるみ汁でいただく「くるみうどん」屋さん、氷屋がかき氷をだし、自分で好きなシロップかけるお店など気になるところなど、満載そう。寄居は電車でも訪れられるので、日帰りのんびり旅も良さそうです。
さらに向かったのは埼玉と群馬の県境にある「ヤマキ醸造」。味噌、醤油、おとうふなどをつくっています。
ここのお味噌は何度か通販で取り寄せていたので、現地を訪れる日が来るなんてうれしい。
ヤギを放ちハーブ園もある気持ちの良い敷地。しっかりとした軸と伝えたいテーマがありそうです。
自然環境抜群の中で農薬・化学肥料・除草剤など一切使用しない国産有機JAS認定の原料を使用しての製品づくり。ショップの二階は見学コースになっていて、ガラスを通して醸造の樽を見せていて、発酵の様子などがわかります。
ちょうど団体向け説明ガイド付の時間で貴重なお話がきけました。
米と味噌、強いては食は昔から生きるためのものであること、特に武士にとっては重要なものであること、味噌と醤油の必要性と歴史。
野田のキッコーマンや銚子のヤマサさんの成り立ちもお話され、自分の会社のことだけではなく味噌と醤油の日本人にとっての大切さ、だからこそ大切に作りつつ価値の普及を考えていることが伝わってきました。この企業もじっくり改めて取材してみたいものです。
ランチは別の家屋で。
ほぼお豆腐なのに色んな味と食感で飽きない「おとうふ御膳」。
白和え、生ゆば、豆腐餻が旬の野菜とともにちょこちょこ、そしてその場でつくる手作り温豆腐、特に出来立てのふわふわ豆腐とお揚げが入ったお味噌汁と、コロッケのような麦ポン香り揚げは絶品。
こんなランチを食べられるなんて、大人になって、そしてなんとか根性で働き続けて良かった、と思える瞬間。
その後は絹の湯で体も癒しました。
1日目はちょっと優雅な慰安旅行という感じですが、2日目はより生活目線、知らない知らないディープな群馬巡りになるのです。続く
かなざわ夕方からさんぽ
金沢より能登、高山より飛騨古川、福岡より久留米や八女に惹かれ、最近いわゆる観光地はすっかり通過点。でも町に文化が積もっていて、静かな時間が流れている金沢は、やっぱり素通りはできません。
夜に待ち合わせもあり、夕方から朝にかけて少しの間過ごしました。
ホテルに荷物を預けて、21世紀美術館など観光スポットを避けるように歩き、兼六園のすぐ近くにある庭園、「玉泉園」へ。
400年以上前にできた上下二段式の回遊式庭園で、今はお庭を眺めながら会食できるレストランがあります。
お庭を眺めながら長めの道をゆっくり辿り、心が落ち着く頃に、茶室にたどりつきます。
「灑雪亭(さいせつてい)露地」という金沢最古の茶室。
ここは重要文化財に認定されて滅多に使われないそうで、私は隣の懐石をいただく間だったところで、先ずは手を清めて。
春の陽射しが気持ちよく、ほっくり。
金沢のお茶席では必ず出されるときう「よしはし菓子所」のお菓子が九谷焼に載せてでてきて、嬉しい。こういうフランクさも。
そして和やかな雰囲気でお点前をいただきました。茶碗は「大樋焼」という飴色をした金沢のうつわでした。
この地方では子供の時にお茶とお花を習うのが一般的のようで、特に金沢はお茶がとても身近。観光客向けにもオープンなお茶席がたくさんあるそう。
私は「大樋焼」という金沢市内の茶碗でお点前をいただぎました。
お茶を習いたてで、でもあまりに慣れなくて少ししんどくなっていたわたくし。「この世界にいるときだけ全てをシャットダウンして静寂になれる」という先生のお言葉に、もっと遠くを見ようと決意。
日が暮れかけた金沢の町を歩いてみます。
大好きな美術館である「鈴木大拙館」は、閉館後でと外にあるベンチに座って眺めているだけで心が落ち着くし、
人気のなくなった21世紀美術館は、この美術館の本来の目的「町の公園のような美術館」を取り戻して、しっかり町に溶け込んでいます。
待ち合わせ時間にはまだまだあり、気になっていた「あうん堂」へ。
浅野川の近くの比較的住宅街にぽつんとある古本屋カフェ。ご自宅をリノベーションしてはじめたそうですが、人のお宅の本棚をみながらリビングにお邪魔しているような、心地よい空間。
本は見事に大人のセレクトで手にとりたいものがいっぱい。
本をゆっくり選びたく、珈琲を頼むとこんな可愛くでてきてきゅんとなります。
金沢の「東出珈琲」か、珠洲の「二三味珈琲」の地元もの2択なのも素敵。
こんなお店が近くにあったら、きっと救われます。
夜は金沢で暮らす人のために静かな時間が流れてました。
翌朝は宿近くの「東出珈琲店」へ。
地元の方が気軽に入り、朝のひとときをすごしてさっと出るような、町に馴染んだ喫茶店。
北陸新幹線開通で、そして外国の方に大人気で、とんでもなく混んでいる金沢。でも一時期より落ち着いたとの声もあり、歩いてても魅力的なものがいっぱいで、まだまだ知らないことばかりで、混雑を避けるように、また来たいです。
二戸のよいものめぐり
岩手・二戸。新幹線が止まるのに今も昔も決して目立ってはいないけれど、浄法寺塗、竹細工、雑穀文化など古くからあるよいものがたくさんあってずっと気になっていました。
「二戸に行きたいです」とわがままをいい、一緒にしごとをしてきた県女子さんとプチドライブ。お互いおやすみをとって、いわてのよいものに触れる心地良い時間。
まずは浄法寺塗勢ぞろいの「滴生舎」へ。
国産漆のうちの約6割を生産している二戸・浄法寺。霊山・天台寺で使われ、僧から庶民のうつわとして伝わり、生産技術が発達したとのこと。
「滴生舎」は天台寺のふもとにあり、二戸・岩手の作家さんだけでなく浄法寺の漆を使う作家さんのものを集めて展示・販売しています。
店内に工房もあり、若い職人さんが作っているのがガラス越しに見学できたり、漆絵付体験教室も開くことで「浄法寺塗」の文化を伝えている貴重な場所です。
質問攻めの私にお店のひとがひとつひとつ丁寧に教えてくれます。
「木地師」により木でつくった型をうるし職人が購入、3か月かけて何度も何度も塗り重ねて作り上げること。刷毛は人の髪の毛。
日常で使っていくうちに徐々にはがれてきて、色合いが変わり、風合いが出てきます。これが魅力。
ずっと欲しかった浄法寺塗。散々見尽くして、最初に目があった中側の漆も国産の汁椀を購入。
勇気のいるお買い物ですが、色合い、風合いの変化を楽しみながら一生使いたいです。
漆は剥がれたら、このお店に送ればまた塗ってくれるそう。また塗ってもらえるよう長生きしたい。。
二戸のもうひとつの代表的な工芸「プラム工芸」。
硬くて木肌が柔らかなオノオレ樺(カンバ)を加工した生活道具を製作する工房です。
知名度が高い割に地味な佇まい。そして店内の展示も相当素朴なのですが、全国の百貨店から注文が殺到する怖れ多い場所です。
木工カトラリーはひとつひとつのラインが美しく、滑らかで手触りが心地よくて驚きました、木工ってあまり興味なかったのですが、日常に存在したら日々がほんわか、幸せになりそう。そんな世界がぴったりな新婚&妊婦の県女子さんは朝食が似合いそうなプレートを買ってました。
そしてメインの「米田工房 そばえ庵」へ。
素朴な畑の丘の上にあります。
米田カヨさんという二戸の食文化を伝える方の店。岩手県が郷土食を伝える人を認定する「食の匠」でもあります。
この地域は盆地の寒暖の差があり、またコメや小麦が育たないことからあわやひえなどの雑穀、蕎麦の実の栽培が盛んになりました。
そんなこの土地ならではの食文化を、てづくりのごはんの提供とお話、さらには体験を通して伝えていくという、ただのお蕎麦やさんではない文化伝承の場です。
席に着くと「ようこそいらっしゃいました」とカヨさんが笑顔で迎えてくれました。
なんとも素敵な笑顔に安らぎます。
私たちのところだけでなく、他のお客様が着くとテーブルにいらして、ようこそ、と話しかけます。お客様と会話しながら提供するごはんの背景の文化をお話していきます。
この伝え方が決して一辺倒ではなくおしつけがましくなく、お客様に合わせて寄り添うようにされているのが素敵です。柔らかであったかでみんなカヨさんのファンになってしまいそう。
食事はすべてが手づくりで丁寧に作られているのがわかります。雑穀、おそばが入った「田舎セット」を頼みました。
名物の十割そばは、そば粉やつゆ、しょうゆまで自家製。
このおそばに魅了された人が、東京から二戸まで通って蕎麦修行したそうです。カヨさんとおそばに魅了されたお弟子さん、多数いるそう。
店内の半分がそば打ち教室になっていて、体験でも食文化を伝えています。
「やなぎばっと」。
そば粉を水で溶かした「はっと」(山梨でいう“ほうとう”)を柳の形にするのは、柳が春一番で芽吹き、最後に折れることから「丈夫で長生きして」という願いを込めたものだそう。
手作り感がつたわる、優しい味。
「へっちょこだんご」。
うつわは浄法寺塗です。
「へっちょ」は“苦労”の意味があるそうです。「へっちょはがせた~」とよくいうそうですが、「苦労させた~ご苦労様~」の意味だそうです。
「へっちょこだんご」は一連の農作業を終え、収穫が終わったときに「おつかれさま」という気持ちを込めて集落の農家みんなで食べた御汁粉。
だんごの素材はたかきび。あんこも甘ったるくなく、小豆自体のおいしさが生かされています。
さらには、この地域の特産の「やまぶとう」とマヨネーズと梅を和えたソースが美しい青菜や雑穀もいちいち唸りながら食しました。
岩手は素材に恵まれていて、海の幸もや山の幸もいちいち美味しいのですが
2人の結論は「手の込んだ、思いのつまった土地に根差した食が一番のごちそう」です。
どんな高価な食材よりも贅沢な食事。
土地に根差した、その土地だからこそ生まれるものづくりと生活。地味で素朴ではあるけれど、確かに似ている文化はあるかもしれないけれど、そこでしか育まれないもの、そこにしかない「たからもの」がそれぞれの土地にあります。
ということを二戸は改めて教えてくれた場所。
宝物さがしときちんと伝えること、地道にやっていきます。