レトローカル旅

レトロに出会い、地域と繋がる、最高のひとり旅

二戸のよいものめぐり

 岩手・二戸。新幹線が止まるのに今も昔も決して目立ってはいないけれど、浄法寺塗、竹細工、雑穀文化など古くからあるよいものがたくさんあってずっと気になっていました。

「二戸に行きたいです」とわがままをいい、一緒にしごとをしてきた県女子さんとプチドライブ。お互いおやすみをとって、いわてのよいものに触れる心地良い時間。

まずは浄法寺塗勢ぞろいの「滴生舎」へ。

http://www.tekiseisha.com/

国産漆のうちの約6割を生産している二戸・浄法寺。霊山・天台寺で使われ、僧から庶民のうつわとして伝わり、生産技術が発達したとのこと。

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「滴生舎」は天台寺のふもとにあり、二戸・岩手の作家さんだけでなく浄法寺の漆を使う作家さんのものを集めて展示・販売しています。

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店内に工房もあり、若い職人さんが作っているのがガラス越しに見学できたり、漆絵付体験教室も開くことで「浄法寺塗」の文化を伝えている貴重な場所です。

質問攻めの私にお店のひとがひとつひとつ丁寧に教えてくれます。

木地師」により木でつくった型をうるし職人が購入、3か月かけて何度も何度も塗り重ねて作り上げること。刷毛は人の髪の毛。

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日常で使っていくうちに徐々にはがれてきて、色合いが変わり、風合いが出てきます。これが魅力。

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ずっと欲しかった浄法寺塗。散々見尽くして、最初に目があった中側の漆も国産の汁椀を購入。

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勇気のいるお買い物ですが、色合い、風合いの変化を楽しみながら一生使いたいです。

漆は剥がれたら、このお店に送ればまた塗ってくれるそう。また塗ってもらえるよう長生きしたい。。

二戸のもうひとつの代表的な工芸「プラム工芸」。

http://www.cplum.com/

硬くて木肌が柔らかなオノオレ樺(カンバ)を加工した生活道具を製作する工房です。

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知名度が高い割に地味な佇まい。そして店内の展示も相当素朴なのですが、全国の百貨店から注文が殺到する怖れ多い場所です。

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木工カトラリーはひとつひとつのラインが美しく、滑らかで手触りが心地よくて驚きました、木工ってあまり興味なかったのですが、日常に存在したら日々がほんわか、幸せになりそう。そんな世界がぴったりな新婚&妊婦の県女子さんは朝食が似合いそうなプレートを買ってました。 

そしてメインの「米田工房 そばえ庵」へ。

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素朴な畑の丘の上にあります。

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米田カヨさんという二戸の食文化を伝える方の店。岩手県が郷土食を伝える人を認定する「食の匠」でもあります。

この地域は盆地の寒暖の差があり、またコメや小麦が育たないことからあわやひえなどの雑穀、蕎麦の実の栽培が盛んになりました。

そんなこの土地ならではの食文化を、てづくりのごはんの提供とお話、さらには体験を通して伝えていくという、ただのお蕎麦やさんではない文化伝承の場です。

席に着くと「ようこそいらっしゃいました」とカヨさんが笑顔で迎えてくれました。

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なんとも素敵な笑顔に安らぎます。 

私たちのところだけでなく、他のお客様が着くとテーブルにいらして、ようこそ、と話しかけます。お客様と会話しながら提供するごはんの背景の文化をお話していきます。

この伝え方が決して一辺倒ではなくおしつけがましくなく、お客様に合わせて寄り添うようにされているのが素敵です。柔らかであったかでみんなカヨさんのファンになってしまいそう。

食事はすべてが手づくりで丁寧に作られているのがわかります。雑穀、おそばが入った「田舎セット」を頼みました。

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名物の十割そばは、そば粉やつゆ、しょうゆまで自家製。

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このおそばに魅了された人が、東京から二戸まで通って蕎麦修行したそうです。カヨさんとおそばに魅了されたお弟子さん、多数いるそう。

店内の半分がそば打ち教室になっていて、体験でも食文化を伝えています。

「やなぎばっと」。

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そば粉を水で溶かした「はっと」(山梨でいう“ほうとう”)を柳の形にするのは、柳が春一番で芽吹き、最後に折れることから「丈夫で長生きして」という願いを込めたものだそう。

手作り感がつたわる、優しい味。 

「へっちょこだんご」。

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うつわは浄法寺塗です。

「へっちょ」は“苦労”の意味があるそうです。「へっちょはがせた~」とよくいうそうですが、「苦労させた~ご苦労様~」の意味だそうです。

「へっちょこだんご」は一連の農作業を終え、収穫が終わったときに「おつかれさま」という気持ちを込めて集落の農家みんなで食べた御汁粉。

だんごの素材はたかきび。あんこも甘ったるくなく、小豆自体のおいしさが生かされています。

さらには、この地域の特産の「やまぶとう」とマヨネーズと梅を和えたソースが美しい青菜や雑穀もいちいち唸りながら食しました。

岩手は素材に恵まれていて、海の幸もや山の幸もいちいち美味しいのですが

2人の結論は「手の込んだ、思いのつまった土地に根差した食が一番のごちそう」です。

どんな高価な食材よりも贅沢な食事。

土地に根差した、その土地だからこそ生まれるものづくりと生活。地味で素朴ではあるけれど、確かに似ている文化はあるかもしれないけれど、そこでしか育まれないもの、そこにしかない「たからもの」がそれぞれの土地にあります。

ということを二戸は改めて教えてくれた場所。

宝物さがしときちんと伝えること、地道にやっていきます。

異次元だらけの花巻。童話と温泉とドイツカフェ

一年通った岩手。沿岸部は何度も訪れているのですが、内陸部はわかっていないことが消化不良。

そこで休日を利用して花巻に。

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花巻周辺は童話の世界。山の上を銀河鉄道の列車が上っていくよう、林の中を歩いていると葉っぱたちが会話しているよう。宮沢賢治が想像力をかきたてられ、さらに農業の新しいコミューンを作ろうとしたのがわかる独特な土地柄です。

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そしてメインは温泉。台温泉など気になるところは色々あるけれど、花巻南温泉峡大沢温泉を選びました。渓流沿いの露天風呂が有名すぎて、20年位ずっと恋焦がれていたのです。宮沢賢治も花巻農学校の生徒を連れて通ったことで知られています。

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泊まったのは「大沢温泉湯治部」。

http://www.oosawaonsen.com/touji/

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大沢温泉は「山水閣」「菊水館」「湯治部」と異なる趣の3つの館があり、私は1泊2食付の「菊水館」を予約したはずが、現地に着くととれてないという。

湯治部が一室だけ空いているとのことで仕方なく選んだはずが、大正解。

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築200数十年の建物はほれぼれとしてしまう風情。そして湯治場というとなんとな暗い印象があるけれど、ここは全くはっぴを着たスタッフが「帳場」でてきぱきと働き、廊下も情緒ありかつきれいに掃除してあるのがわかります。

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日帰り客用の待合室もなかなかの風情。

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お部屋は湯治場だけあってこんなコンロがあり一瞬ひるみますが、清潔感がありこたつが和みます。

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お支払も湯治部だけあって独特。部屋代がマスト、お布団や浴衣、ストーブを借りると、どんどん加算されていく積み上げ算。

居酒屋風のお食事どころもあって、メニューも豊富、安くて美味しい。

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炊事場もあるので長期滞在はここを利用すればリーズナブル。学生はここで作るのも楽しいかも。

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そして温泉。入れるお風呂は計5つもあります。名物渓流沿いの混浴露天風呂「大沢の湯」をはじめ、春~秋には窓を開け放しで半露天となる「豊沢の湯」、女性専用露天風呂、檜の香りが和む内風呂「南部の湯」、源泉かけ流しタイル張りのレトロな内風呂「薬師の湯」。

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どれも風合いが違い、湯めぐりが楽しいです。

そしてこの温泉の最大の特徴は、お湯に入った途端、老いも若きも「きもちいい~」と思わず叫んでいるのです!

私もこんなに気持ちよいお湯は早々ないです。

両手をこするとぬるっとする、とってもなめらかな、完全美肌の湯。湯治のお湯だけあって、底からあたたまる。保湿性たっぷり。

そしてこの解放感。

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露天風呂、全国に数あるけれど、そして色々入ってきたつもりでいたけれど、こんな景色もお湯もホンモノ感を感じた場所は初めてかもしれません。これぞ求めていた「THE日本の露天風呂」。

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 名物の渓流露天風呂は20時~21時女性専用で露天風呂の入り口に女性の門番もいて、お客様の気持ちに寄り添っているのがうかがえました。

 

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実は大沢温泉、あまりにも有名すぎて、ひねくれものの私はあまり期待していなかったのです。お客様がたくさんくるから、きっとサービスや質も景色も実際はそれほどでもないのだろう・・と。

しかしここはホンモノです。お湯も風景も心地よさも。湯治部なのでもちろんサービスなんてないのですが、宿の方が宿もお客様も大切にしているのがわかります。

たとえば帳場にいた男性が朝、廊下や階段をさっさと履いて掃除をしている。きもちのよい挨拶をする。少人数でまわしているのがわかりましたがみんな誇りをもち責任もってやっている感じです。

 朝もゆっくり入りました。

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十分ゆっくりしてあったまって、一週間たった今でも体調がよいです。

わざわざ新幹線に乗って来る価値がある場所です。家族も連れてきたい。

弱ったら、ここに来よう。湯治場はここで決まりになりました。。 

大沢温泉にはもうひとつ楽しみが。

大沢温泉から歩いて5分位のところに、ひっそりとある、

完全予約制のドイツカフェ「バックシュトゥーベ」。http://www.backstube-hanamaki.com/

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ハイデルベルグ出身のご主人と岩手出身の奥さまが22年ほど前から2人でやっています。

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8席ほどの、おうちのような小さなお店。ランチもディナーもやっているそうです。

ご主人、陶芸家で笠間や京都にもいたとのこと。今はケーキが大人気で、一度食べたお客様が忘れられない、と全国から注文が殺到しているとのこと。

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実際一度食べたら忘れられないです。ドイツのケーキ、そんな食べたことないですが、東京でもこんな美味しいものはないと思います。

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卵、バター、粉、塩、すべての材料にこだわって丁寧に丁寧につくったてづくりケーキ。

本格的、かつ家庭的な優しい味でほっこり、日差しが降り注ぐ小さな空間にいると昔読んだ絵本の中にいるような気持ちに。

チョココーティングに入れるベリーなどはお庭で育てているそうです。

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宮沢賢治の童話の世界、疲れが取れる温泉、ヨーロッパのおとぎ話の中に入りドイツカフェ。。花巻は異空間だらけでした。

愛される盛岡の宿

町全体がしっとりしていて情緒的、何度訪れても飽きることがない盛岡。

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どっしりと男らしい岩手山、情緒あふれ色気さえある北上川、中津川、古き良きたてものがまちなかに点在していて、歩いていると自分が映画の中に入ったような気分になります。

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刻んできた歴史とお店の思いが独特な空気感となって居心地よい喫茶店も多く存在し、さんぽが楽しい。

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もう仕事は終わってしまったのですが、できることなら通いたい。。

そんな自分をかきたてるような「定宿」をみつけました。というか地元女子に教えていただきすっかり気に入ってしまいました。

「熊ヶ井旅館」

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http://kumagairyokan.com/jp/

創業50年。その頃は盛岡にも情緒たっぷりたくさんの和風な旅館があったそうですが、東北新幹線が通ってからビジネスユースのホテルが乱立、今では旅館は13軒しか残っていないそうです。

入ると一枚板の廊下にしびれます。

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お部屋は清潔できれい。お風呂も洗面所も綺麗に掃除してあって使い心地がよいです。

そしてこのお宿はそこかしこに私の大好きな「民藝調」のものが飾られていること。凧、お面、、よ~く見ると外国ものも。

(といいつつアップの写真がない)

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民藝館にいくと日本のよいものだけではなく、柳宗悦などの民藝家が世界各地で見つけたよいものの収蔵館があるのですが、そんな感じでした。 

「民藝がお好きなんですか?」と聞くと、「自然にそうなったんです」と品があって笑顔の素敵なおかみさん。

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ご主人が各地で買ってきた凧やお面、お義母さまが好きだった各地のうつわをずっと50年間飾っていたらこういう風合いがでてきたそうです。

さらにすごいのは、お客様が「この宿にはこれが似合うと思って」と次々におみやげをもってくること。海外のものも多数。外国人のリピーターもしかり。ヨーロッパ、南米、アジア。。それを品良く並べています。

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日本の良さがわかるお客様にずっと愛されてきた形がつくりだす空間。

しかし最近の若い子は「お面こわい、気持ち悪い」とかネットに書く人もいるとのこと。。

この宿は、ありのままの日本の良さがわかる、好きな人が泊まる場所。

「自然になった民藝館!盛岡の町にはこんなお宿が似合っている。ずっと続けてくださいね!」といってしまいました。

1Fのこの空間は「熊ヶ井食堂」という夜は飲み屋さんになります。

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ベアレンビールはじめ岩手のお酒せいぞろい。旅人には嬉しい。

元おかあさまのお部屋を個室にしています。この感じ、ほっとする。。隠れ家的に知事さんとかがお使いになるそうです。

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そしてひとなつっこい番犬「ごんた」。3代目だそうです。癒される、たまらない。この犬に会うためにだけでも盛岡いきたい。。

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素泊まり5000円。でも泊まるだけではもつたいない。次はここで夕食&飲んでゆっくりしよう。また来よう。

上野桜木〜谷中のたてものめぐり ①

地元を愛するひとに町を案内してもらうと、その町に暮らしている人の息吹を通して町の歴史と生活がわかり、その町がぐっと身近になる。そんな経験を各地域でたくさんさせてもらって
しかしいざ自分となると、東京に長く住んでいるのに、結構知らない。どこを案内してよいのやら戸惑ってしまう。
憧れのエリア上野桜木周辺。かつて多くの芸術家や文化人が住み、最近は感度の高いワカモノで溢れかえっていて益々気になるエリア。
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お世話になっている富山城端の山口誠さんが「谷中の古きよき建物めぐり」を地元の方にご案内いただくと聞き、「わ、わたしもぜひおききしたい、そして東京に来た方をご案内できるようになりたい!」と図図しく参加したのでした。
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ご案内していただいたのは、このエリアある町並みを守り続けている「たいとう歴史都市研究会」の椎原晶子さん。
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笑顔ももの腰も柔らかで、素敵な女性。
お話を聞きながらご案内いただくにつれ、この町のもつ人を惹き寄せる独特の風情や情緒、そしてさんぽがとても楽しいのは、決して自然にではなく、こういう方々が必死に必死に守ってきたおかげなんだと痛感したのでした。
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待ち合わせは「カヤバ珈琲」。
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大好きな喫茶店ですが最近はいつも長蛇の列。
このカヤバ珈琲は大正5年から愛され続けたのですが、平成18年にいったん閉店となってしまいました。
そこでNPO化した「たいとう歴史ー」が仮受け新しい運営者を探して復活したそうです。
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卵焼きをはさんだ名物「たまごサンド」はかつて通っていた近所の方々に聞きながら再現したという、古きよきものを新しい人たちがリスペクトしながらの継続は、今多くの若いお客さんに受け入れられ、伝えられています。

この町のさんぽの心地よさは「古いいい感じの建物が残りつつ」「高い建物がない」「大きな道路がなく道が入り組んでいて楽しい」ことだと思います。
ここも都市計画でそこに大きな道路を作ろうとしたり高層マンション構想もあったそうです。そこを歴史的建物を保存することにより、道路建設を差し止め、高いマンションは6階までとする活動もされてきたそう。

そして財産なのはこの近くにある東京藝大の学生たち。
優秀な学生たちがこの界隈に下宿し、この町の良さを知った人たちが、卒業後もこの町に関わり、新しいものと調和させて活気づけているのです。

続いて向かったのが「市田邸」。
案内されないと決して入ることのない、明治の風情を残すお屋敷です。
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明治末期の日本橋の布問屋さんの豪邸で戦後は
藝大の学生の下宿先でもありました。
今は二階をシェア居住にして住んでもらうことで維持管理してもらい、一階のお座敷を芸術文化活動の拠点としているそうです。
現に案内された時に藝大生によるミニコンサートが開かれていました。
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ちょっとオシャレをした小さなお子さんと若いお父さんお母さんでたくさん。とても心地よい良い空気が流れてました。こんな素晴らしい空間でこんなステキな音楽を聴いて育ったら、きっと心が豊かな人生になるに違いないです。
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若い人に住んでもらって建物を維持。そしてイベントをしたりビジネスすることで町を繋げる。

その最たるものが「上野桜木あたり」。
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通りからちょっと入ったところの静かな場所にありますが、今人気のスポットです。
昭和13年に建てられた三軒屋の壁を取っ払い、路地と座敷で繋がっている場所。
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この風情ある建物棟には「谷中ビアホール」という風通しの良さそうな心地よい空間の地ビール屋さんと
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奥にはお塩とオリーブ屋さん、ベーカリー屋さんがあります。
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オリーブもパンも思わず買ってしまい、どちらもしっかり美味しかったです。

梅が映える三軒のうちの一軒は一階がイベントスペースで2階がやはりシェアハウスだそうです。
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この陽だまりいっぱいの畳の部屋「みんなのざしき」には
ちょうど雛人形が飾られていました。
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お顔が小さくて品があって美しい。この雛飾りもこのエリアを象徴しています。

まだまだ素敵なまち&たてものめぐりは続きます。つづく。。







熊本「わいちゃ会議」


1月末、熊本市で行われた市民プレゼンテーションイベント「わいちゃ会議」に審査員として参加させていただきました。
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「わいちゃ」とは熊本弁で「すごい」という意味だそう。熊本市を元気にし、かつビジネスとなる企画を熱い市民がプレゼンテーションし審査員や参加者と繋がってビジネス化していく、という場。
私のライフワークど真ん中。そんな貴重な場に立ち会えることが有難くて、とても楽しみにしていました。

会場は「未来会議室」という、ワークシェアリングやレンタルスペースもある空間。
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かわいい学生がこんな高い場所で勉強していてかなりポップ
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てっきり公共施設と思いきや、パチンコ店のオーナーが使っていないスペースを有効活用したく生まれたそう。
こういう「場」があるだけで、人がつながるきっかけになり町が活性化する大きな要素となります。CSRとはいえ感服。

このスペースの一角でイベントは行われました。

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審査員はトラベルジャーナリストの寺田直子さん、オーガニック農産物販売だけでなく、路上生活、生活保護者などの就農支援を行う小島 希世子さんなど「ずっと会いたかった」方。
特に寺田直子さんは20代から憧れていたのに、道中ご一緒でき、気さくでご親切で、言葉のひとつひとつに深みがあり論理的で、すっかり憧れの女性になってしまいました。
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もう一方、大ファンになってしまったのはMCの大桃美代子さん。
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場を盛り上げつつ進行するのはもちろん、農業、地域活性にも精通し、時折事例も交えながらその場にあった審査員以上のアドバイスをされていました。
さらにオフの場でとプライベートでもとても気さくで場を盛り上げ、かつ博識で、芸能人というよりも“美しい大学の先生”と話しているようでした。

メインの市民によるプレゼンテーションは
農業と企業をつなげる、空き家&教育旅行、おおにぎりコミュニティ、熊本を世界観光都市にするためのスマホビジネス、など。
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第一回目の行事なのに聴講者も大勢で、このプレゼンターとビジネスとして組みたい、という方もたくさん生まれ、まさに市民と市民がつながる場でした。そんな場に立ち会えて興奮しっぱなしで、私は大したことを言えないので、この場を讃えたい、応援したい、ちょっとでも元気づけたい、という一心でした。
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もうひとつ感服するのはこの会議、熊本市観光プロモーション課の主催。お金の使い方は色々だろうに、こんな素晴らしい企画を採用した、ご英断。
すぐにはお金が落ちないけれど、このような場を作ることによって市民のモチベーションを上げ、つながり、ジワジワと漢方のように町が盛り上がるはずです。
ぜひ今後も続けてほしいと思いました。
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この場だけでも相当なよい経験でありがたかったのに
さらに素晴らしい時間が続いたのでした。

審査員のおひとり、放送作家&劇作家の横山龍太さんが経営するお店で、熊本市と企画会社フラッグスさん、審査員や参加者大勢で打ち上げ。
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この場でも寺田さん、大桃さん、そして東海大学エコツーリズムの小林先生とツーリズム、地域活性、観光などについて次から次へと熱く語ったのでした。
自分の専門、でも各界に精通したすてきな女性たちが次々語る全てが、わたしにとっては貴重で、
わたしにとっては最大の至福の時間でした。

この中で印象的だったのは
「ラグジュアリーとは何か」という寺田さんのお話。
外国人にとっても、贅沢にお金をかけることではなく
「一輪の花をテーブルに置くココロ」とだそう。

心豊かになれる瞬間を、みんな旅に求めてる。
色んなヒントをいただいた夜でした。  
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横山さんのお店で美味しい肉鮨や馬刺しを
いただいたのに、あまりに楽しい時間で話に興奮して、写真をとらなかったのが無念です。

〆は夜中の11時にまだ空いているケーキ屋さんで熊本市民に永く愛されるスイーツ。
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緑の銀紙に包まれたケーキは、生地に洋酒がたっぷり染み込んである「リキュールマカロン」。ちょっと素朴で、昭和の人間なら懐かしくて、病みつきに。
ああ今思い出しても頬がほころんで、
このためにまた熊本にいきたくなります。

夜中に食べてしまい罪悪感にかられながら
今日の幸せをおもったのでした。
こんな会議をやってしまう企画会社、通してしまう熊本市、プレゼンして繋がる熱い市民、そして集まる素敵な方々。
そんな中に自分も身を置けるなんて、ありがたい限り。
熊本パワーに背中を押されてわたしも大きな糧となる、忘れられない日でした。

熊本の今後がとても楽しみです。絶対大丈夫な風格ある都市。
わたしもこの日を財産にお役にたてるよう、精進しようと決意しました。






唐津の素敵な夜


5月に旅行した際にひとめぼれしてしまった唐津。以来、公私ともども唐津の魅力普及活動に励んでいる私ですが、
このたび唐津で講演させていただきました。
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大好きな土地でこんな機会に恵まれるなんて、シアワセすぎました。

しかしこの後さらに極上を味わったのです。
今回わたしを呼んで下さった、ギャラリー一番館代表 坂本直樹さん方のご案内による
唐津の夜案内」が始まったのです。

あまりにもオシャレで、全てが異空間で、あれは夢だったんじゃないかと思う位、素敵な素敵な夜でした。思い出してはウットリです。

その日はちょうどボジョレーヌーヴォーの解禁日で、講演会場の近くの海沿いのホテル「唐津シーサイドホテル」で美味しい赤ワインを味わわせていただいた後、ほろ酔い気分で街へくりだしました。

まずは唐津で40年以上続く老舗バー「ヘネシー」。佇まいからして、うっとりです。
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中に入ると、タイムスリップしたような異空間、だけれど決して古びてなく、とても洗練されています。
照明も程よく明るくて
とても心地がよいんです。
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マスターも素敵な笑顔で、紳士的で
きっとここでは酒に呑まれるなんてことなく、明るい気持ちでよい時間を過ごせそう。
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わたしが唐津在住者で酒好きだったら間違いなく通います。
並んだお酒の佇まいもテーブルの感じも、それにコースターの色合いやフォントも、全てが品があって落ち着いてて、でも高級すぎず、程よい感じです。
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あまりにも素敵なのでコースターをおねだりして、マスターのサインをいただきました。
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その後は唐津の鯖寿司が美味しいお店だといいます。主催の西日本新聞さんが設けてくださった席です。恐縮です。
ご案内していただいた時、うわー!と声をだじした。
以前通りがかった時、独特の雰囲気を醸し出していて入ってみたいな、と思っていたお店だったのです。
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ショーウインドウに、お寿司ではなく、唐津焼のみが並んでいるところが既にたまりません。

こちらも中に入ると、全くの異空間。振り子時計が止まっているようなタイムスリップしたようで、映画の中に入ったようです。

ここはジャックマイヨールが度々訪れた場所だそうで、柱になんとサインも残っています。
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しかも驚くのが、こんなに日本的なお鮨屋さんなのに、奥にとっても大きなワインセラーをお持ちなのです。
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こだわりの唐津のお鮨にこだわりのワイン。ジャックマイヨールさんもたまらなかったのでしょう。欧米の方に教えたいお店。

私は、唐津焼のおちょこを選んで、
唐津の酒をみながら
唐津焼のうつわにのせた玄界灘の魚と
唐津の鯖寿司を味わいました。
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静かに語らいながらの楽しい時間でした。
鯖寿司の写真を撮り忘れてしまったのですが、「こんな鯖寿司食べたら他のを食べれなくなってしまう」と言ってしまったほど絶品でした。

大人はシアワセ、と痛感。

そしてシメは、私のわがままにより
カフェルーナさんという、唐津焼の器でだすコーヒー屋さんへ。
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こちらはこんな可愛い唐津焼もお店で売っていて、女子には特にオススメです。オーナーの女性も可愛らしい。


この3つのお店は、歩いてすぐの場所で、駅からもすぐ近くです。商店街の中心にあります。

唐津は歴史ある街だけあって、夜の街の雰囲気もレトロでノスタルジックな気持ちになります。ぼやーと霞ががってて、ちょっと静かでほんとうに夢の中にいる気分です。

講演でも述べさせていただいたのですが、
唐津は街ナカだけでもすべてがそろってます。
グルメ、歴史的スポット、スイーツ、唐津焼、そして絶景。
しかし昼だけじゃなく夜も歴史の刻みと重みが街の随所に染み込んでいることを知りました。
 大人なら、この感じはたまりません。
そしてさらに私は普及活動を深めるのでした。
ぜひ、この魅力を味わいにみなさんも唐津へ。














四谷ちょっとさんぽ

雨降る夜に四谷さんぽをしてきました。
四谷といっても四谷駅周辺のみ。でもそんな小さなエリアのみでずいぶん楽しめます。

好きなモノが似ている同僚が出産のためしばらく仕事を離れるので、お祝いも兼ねて、しごと帰りにぷらっといってきました。
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といっても10年ぶり位の無理矢理5時ピタ。柳宗理デザイン事務所のそばにある「柳ショップ」が18時に閉店してしまうからです。

柳宗理の台所用品やカトラリーをちょっとずつ集めているのですが、四谷に柳宗理デザイン事務所があり、ショップもあるという情報を聞き付けて気になっていました。
お誘いした20代後半の同僚は大学生の時、バイト代を柳宗理鍋やフライパンに全部注ぎ込んだというツワモノ。

四谷駅近く、でもなかなかわかりづらい裏道を一本入ったところの昭和レトロなアパートの一階にショップはありました。
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雨で夜だったので建物は撮らなかったのですが「住みたい!」と思うようなシブ古い佇まいでした。隣の建築事務所も昭和モダニズム。

中に入ると本当に1坪位で棚が2つあるだけの小さな空間。同僚のお腹が大きいので柳宗理椅子を用意してくれたのですがそうすると身動きが取れなくなりました。
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フライパンや鍋だけでなく、柳宗悦が指導した出西窯や因州中井窯もありました。風合いが美しくてしばしうっとりしてしまいました。
縁だけは素焼きのままでワザと釉薬をかけない、焼くときに重ね合わせたらでてしまう、お皿の底の跡をなくす、などを指導していたとのこと。

フライパンも鉄だけではなく、今はセラミックもあるそうです。
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柳宗理デザインは百貨店や雑貨屋さんなどそこかしこに展開されてますが、
鉄鍋やトレーなどあまりみたこともないものもたくさんあり、2人で終始興奮しっぱなしでした。
お店の人と話しが弾むと「この用具はこうも使えますよ」という多様な使い方や「わたしも使ってるけれど、大した手入れせずに何年も経つ」とか教えてくれて、道具がぐっと身近になります。
結局、代表作品である「器に注ぎやすい」蓋つき鍋とザルを購入。
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小さなフライパンや品切れしてなかったスチールボウルは、またの機会にきっと死ぬほど愛しているだろうショップの方と会話しながらちょっとずつ揃えようと思いました。

すっかり長居をした次に向かったのは
四谷駅近くのたい焼き「わかば」。
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たい焼きさここが一番のお気に入り。
あんこが品が良く甘すぎず、かつ尻尾までぎっしり詰まっているのです。
お店ではイートインもできます。
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焼きたてのパリッパリです。
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ホクホクを食べていたらシアワセになり、今日あったイヤなことも忘れてしまいました。
湯呑み茶碗もお皿もお持ち帰り用の包み紙もかわいい。
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同僚は鯛焼きが大好きだったらしく、箸置きも鯛焼きにしてるくらいだそうで、これまた喜んでいて良かったです。
かわいい女性が喜ぶと嬉しくなるおじさんの心境ときっと同じです。

その後は四谷駅前にあるレトロ喫茶「ロン」へ。
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この喫茶店、前から相当気になっていましたがレトロ喫茶ブームの昨今、女性誌の表紙にもなっています。
そしてつい大阪芸大などを設計した高橋靗一の初期作品でもあります。一階と二階が吹き抜けになっています。
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席から眺める光景も絵になります。
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二階に上がる螺旋階段もライトも
品があって落ち着きます。
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雨降る夜にぴったりな空間でした。。ここでゆっくりするのは結構な贅沢なこと。
メニューには、クリームソーダ、ミルクセーキ、レモンスカッシュもありました。
卵サンドと珈琲をオーダー。
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卵が甘く仕上がっていて「お好みで」と添えられた塩を振ると、ぐっと美味しさが増しました。

17時に会社を出て、3時間弱のさんぽ。
日々追われて余裕がない自分にとってはいつも通っている場所なのに、ちょっとした旅行をした気分になりました。
近くても、常に旅はできますね。